
こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。
不動産業など課税売上割合が95%未満の法人などでは、車両や建物を購入したときに支払った消費税の一部を、消費税の申告で控除できないことがあります。
この控除できなかった消費税を、控除対象外消費税額等といいます。
税抜経理を行っている法人では、資産に関する控除対象外消費税額等を、主に次のいずれかの方法で処理します。
- 購入した固定資産の取得価額に含める
- 固定資産には含めず、「繰延消費税等」として別に資産計上する
どちらを選んでも、最終的には経費になります。違うのは、いつ、どのくらいの金額が経費になるかです。
目次
まず、当期の経費にできないかを確認する
資産に係る控除対象外消費税額等であっても、次のいずれかに該当する場合は、法人が費用として経理することを条件に、その年度の経費にできます。
- 課税売上割合が80%以上
- 棚卸資産に関するもの
- 一つの資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満
これらに該当しない場合に、固定資産の取得価額に含めるか、繰延消費税等にするかを検討します。
なお、「20万円以下」ではなく、20万円未満です。ちょうど20万円の場合は、この要件には該当しません。
固定資産に含めるかどうかの判断基準
早く経費にしたい場合は、次の2つの償却速度を比較します。
- 固定資産の取得価額に含めた場合の減価償却率
- 繰延消費税等として処理した場合の償却率
繰延消費税等の償却率
12か月決算法人の場合、繰延消費税等の通常年度の償却率は次のとおりです。
12か月 ÷ 60か月 = 20%
したがって、繰延消費税等は、通常年度には年間20%ずつ経費になります。
ただし、繰延消費税等が発生した最初の年度は、その2分の1が限度となるため、12か月決算法人でも最大10%です。
固定資産の償却率と20%を比較する
簡単な目安は、次のとおりです。
| 固定資産の償却方法 | 20%との分岐点 | 基本的な考え方 |
|---|---|---|
| 定額法 | 耐用年数5年 | 5年以下なら固定資産に含める方が早く経費になりやすい |
| 200%定率法 | 耐用年数10年 | 10年以下なら固定資産に含める方が早く経費になりやすい |
| 250%定率法 | 耐用年数12年 | 旧制度対象の資産に限られる |
定額法の耐用年数5年の償却率は20%です。
1 ÷ 5年 = 20%
現在、新たに取得する資産に適用される200%定率法では、耐用年数10年の償却率が20%です。耐用年数12年の償却率は16.7%となります。
したがって、現在取得する資産については、次のように考えると分かりやすくなります。
- 定額法で耐用年数5年以下
→ 固定資産の取得価額に含める方が早く経費になりやすい - 定額法で耐用年数6年以上
→ 繰延消費税等の方が早く経費になりやすい - 200%定率法で耐用年数10年以下
→ 固定資産の取得価額に含める方が早く経費になりやすい - 200%定率法で耐用年数11年以上
→ 繰延消費税等の方が早く経費になりやすい
ただし、初年度は繰延消費税×1÷60、固定資産の減価償却費は事業に使用した月数で按分されます。
決算直前に購入した場合などは、上記の目安と逆の結果になることがありますが、初年度の比較を省略し、通常年度の償却スピードで判断するのが良いかと思います。
定額法では耐用年数5年、現在の200%定率法では耐用年数10年が、20%との簡易的な分岐点です。
ただし、控除対象外消費税額等が高額な場合、特別償却がある場合、または分岐点に近い場合には、初年度を含めて個別に試算します。
仕訳例
前提
次の条件で車両を購入したものとします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車両購入額 | 550万円(税込) |
| 税抜価格 | 500万円 |
| 消費税等 | 50万円 |
| 課税売上割合 | 60% |
| 非課税売上割合 | 40% |
| 購入時の税区分 | 共通対応課税仕入10% |
控除対象外消費税額等は次のとおりです。
消費税等50万円 × 非課税売上割合40%
=20万円
控除対象外消費税額等がちょうど20万円であるため、「20万円未満」の当期損金要件には該当しません。
車両購入時の仕訳
会計ソフトに税込金額を入力し、自動税抜処理を行う場合の入力例です。
| 借方 | 金額 | 税区分 | 貸方 | 金額 | 税区分 |
|---|---|---|---|---|---|
| 車両運搬具 | 550万円 | 共通対応課税仕入10% | 現金預金 | 550万円 | 対象外 |
この入力により、会計ソフトでは通常、次のように分解されます。
- 車両運搬具:500万円
- 仮払消費税等:50万円
消費税の精算により、控除できない20万円が雑損失として計上されたものとして、以後の仕訳を説明します。
1.控除対象外消費税額等を車両に含める場合
| 借方 | 金額 | 税区分 | 貸方 | 金額 | 税区分 |
|---|---|---|---|---|---|
| 車両運搬具 | 20万円 | 対象外 | 雑損失 | 20万円 | 対象外 |
この処理をした場合、車両の取得価額は次の金額になります。
税抜価格500万円
+控除対象外消費税額等20万円
=520万円
20万円は、車両本体と一緒に減価償却します。
例えば、耐用年数6年、200%定率法、12か月分を償却できる場合、控除対象外消費税額等20万円に対応する初年度の減価償却費は、概算で次の金額です。
20万円 × 償却率0.333
=6万6,600円
2.車両に含めず、繰延消費税等にする場合
| 借方 | 金額 | 税区分 | 貸方 | 金額 | 税区分 |
|---|---|---|---|---|---|
| 繰延消費税等 | 20万円 | 対象外 | 雑損失 | 20万円 | 対象外 |
この場合、車両の取得価額は税抜価格の500万円のままです。
控除対象外消費税額等20万円は、繰延消費税等という別の資産に計上します。
初年度の償却仕訳
12か月決算法人の場合、初年度の償却限度額は次のとおりです。
20万円 ÷ 60か月 × 12か月 × 1/2
=2万円
| 借方 | 金額 | 税区分 | 貸方 | 金額 | 税区分 |
|---|---|---|---|---|---|
| 繰延消費税等償却 | 2万円 | 対象外 | 繰延消費税等 | 2万円 | 対象外 |
翌年度以降の償却仕訳
12か月決算法人の通常年度は、年間4万円が償却限度額になります。
20万円 ÷ 60か月 × 12か月
=4万円
| 借方 | 金額 | 税区分 | 貸方 | 金額 | 税区分 |
|---|---|---|---|---|---|
| 繰延消費税等償却 | 4万円 | 対象外 | 繰延消費税等 | 4万円 | 対象外 |
この事例ではどちらがよいか
耐用年数6年の車両に200%定率法を適用する場合、償却率は33.3%です。
一方、繰延消費税等の通常年度の償却率は20%で、発生年度は最大10%です。
したがって、車両を期首近くに購入して12か月分の減価償却ができる場合は、控除対象外消費税額等を車両の取得価額に含めた方が、早く経費になりやすいと考えられます。
| 処理方法 | 初年度に経費になる金額の目安 |
|---|---|
| 車両の取得価額に含める | 約6万6,600円 |
| 繰延消費税等にする | 2万円 |
ただし、決算直前に車両を購入した場合、車両の減価償却費は使用月数で按分されます。
そのため、取得時期によっては繰延消費税等の方が初年度の経費が大きくなることがあります。
まとめ
資産に係る控除対象外消費税額等については、次の順番で判断します。
- 課税売上割合80%以上など、当期の経費にできる条件を満たしていないか
- 当期の経費にできない場合は、固定資産の償却率と繰延消費税等の20%を比較する
- より早く経費にしたい場合は、償却額が大きくなる方法を選ぶ
- 発生年度は、繰延消費税等の償却率が最大10%になる点にも注意する
- 固定資産の取得時期による月数按分も確認する
現在取得する資産についての簡単な目安は、次のとおりです。
定額法は耐用年数5年、200%定率法は耐用年数10年を、繰延消費税等の年間償却率20%との分岐点として考える。
なお、資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入制度を適用する場合は、原則として、その事業年度に生じた資産関係の控除対象外消費税額等の全額に適用します。
資産ごとに自由に方法を選べるわけではない点にも注意が必要です。
佐藤 修一
税理士法人Accompany 代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。







