インボイスをやめる場合の届出は?そもそもインボイスってやめられるの?

佐藤修一

こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

インボイス制度がスタートしてしばらく経ちましたが、「取引先の動向を見て念のため登録はしてみたけど、やっぱり免税事業者に戻りたい」「経理事務負担や消費税の納税が当初の想定よりもきつくて、登録を取り消したい」と悩まれている方も多いのではないでしょうか?

「一度登録してしまったら、もう戻れないのでは…」と不安になる必要はありません。 一度取得したインボイス(適格請求書発行)の登録は、所定の届出を提出することで取り消すことが可能です。

ただし、「届出を出せば明日からすぐにやめられる」というわけではありません。提出のタイミングによって免税事業者に戻れる時期がずれたり、そもそも「すぐには取り消しができないケース」も存在します。

この記事では、すでにインボイス登録をしているがやめたいとお考えの方に向けて、以下の内容について分かりやすく解説します。

  • インボイス登録の取消しができるケース・できないケース
  • 登録を取り消すための具体的な手続きや提出期限
  • 取り消した後の注意点(取引先への通知や再登録時の制限など)

これを読めば、ご自身の状況で今すぐ取り消しが可能かどうか、そして具体的にどう動けばいいのかが明確になります!

インボイス登録の取り消しを希望する一般的な理由

インボイス登録の取り消しを検討する理由として、以下のような理由などが考えられると思います。

  1. 消費税の申告・納付による事務負担の増加
  2. 納税によるキャッシュフローの悪化(手元にお金が残らない)
  3. 取引先が一般消費者メインで、そもそもインボイスが不要だった
  4. 取引先との交渉の結果、免税事業者に戻っても問題ないと分かった

インボイス制度に登録したものの、要件を満たす請求書の発行や領収書の税区分チェックなど、日々の経理業務が想像以上に複雑になり、本業に支障が出ているというご相談をよく耳にします。また、売上はこれまでと変わらないのに、消費税の納税によって手元のキャッシュが減ってしまい、資金繰りや経営を圧迫してしまったというのも考えられる理由としては大きいかと思います。

さらに、「取引先を失うかもしれない」という不安から念のため登録してみたものの、フタを開けてみれば顧客が一般消費者ばかりだったケースや、取引先と話し合った結果「インボイスの登録がなくても問題ない」と合意できたケースなど、そもそもインボイスを登録するメリットがなかったという声も多く見受けられます。

インボイス登録の取消しができるケースとできないケース

ここまで読んで、「自分もやっぱり免税事業者に戻りたい!」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、冒頭でもお伝えした通り、インボイスの登録は「誰でも・いつでも」すぐに取り消して免税事業者に戻れるわけではありません。

ここでは、取消し(免税事業者への復帰)ができるケースと、できないケースについて分かりやすく整理しておきましょう。

取消しができない(実質的に取り消すべきではない) ケース

まずインボイスの取消しをすれば、消費税の納税義務もなくなると勘違いしているケースもあるため注意が必要です。

結論から言うとインボイスの取消し自体は、いつでも可能です。

ただし、取消しをするための届出を出すタイミングが大事で、提出時期によっては取消しが約1年後になってしまうこともあります。

また、消費税の納税義務(課税事業者になるかどうか)については明確な消費税法による基準があるため、インボイスは取消せても消費税の納税義務は取り消せないというケースもあります。

(ただし、元々免税事業者で基準期間の課税売上高が1,000万円を超えてない事業者がインボイス登録をし、その後取消しをしたい場合は免税事業者に戻ることができます。)

つまり、課税事業者がインボイスの取消しをしてしまうと、インボイスが発行できなくなるのに消費税の申告・納付は続けなければならないという、デメリットしかない状態になってしまうため、実質的に「いまは取り消すべきではない(取り消せない)ケース」と言えます。代表的なものは以下の3つです。

  • 基準期間や特定期間の課税売上高が1,000万円を超えている 

消費税の大原則として、「基準期間(個人事業主は前々年、法人は前々事業年度)」の課税売上高が1,000万円を超えている場合、インボイス登録の有無に関わらず、自動的に消費税の納税義務者となります。 そのため、そのようなケースの方はインボイスの登録を取り消したとしても、消費税の納税義務は消えないため、引き続き申告と納付が必要になります。

  • 「消費税課税事業者選択届出書」を提出しており、2年の縛りがある

自ら進んで課税事業者になるための届出(消費税課税事業者選択届出書)を提出している場合、原則として2年間は消費税の納税義務が免除されないというルール(いわゆる2年縛り)が存在します。 この期間中にインボイスの登録を取り消しても、やはり消費税の納税義務は残り続けます。ただし、インボイスの「経過措置」を利用して登録を行った方は、この2年縛りは適用されません。ご自身が過去にどのような手続きを踏んで登録したか、控えを確認してみましょう。

ワンポイントアドバイス

複雑なケースにはなりますが、

  1. インボイスの登録を行っている
  2. 簡易課税を選択している
  3. 消費税課税事業者選択届出書は提出していない

場合は、基準期間の課税売上高が1,000万を超えていなければ免税事業者に戻れます。

あくまで簡易課税の選択は計算方式に関して選択をしているにすぎないからです。

  • 高額な固定資産(高額特定資産)を購入している

 課税事業者である期間中に、税抜1,000万円以上の機械や建物などの「高額特定資産」を購入した場合、その購入した年から原則3年間は納税義務が免除されないという厳しい制限がかかります。 これも同様に、この制限期間中にインボイスを取り消しても、消費税の納税義務からは逃れられません。
「大きな設備投資をして消費税の還付を受けた直後に、納税義務をなくす」といったことを防ぐためのルールだからです。

上記のようなケースの場合はインボイスを取り消したからといって免税事業者に戻ることはできないため、注意が必要です。

Warning

インボイスを取り消したら必ずしも消費税の納税義務がなくなるわけではない

取消しができるケース

結論から言うと、所定の時期までに不備のない届出を提出できた場合は、インボイス登録を取り消すことができます。(インボイス登録を取り消した結果、免税事業者に戻るパターンもあります)

具体的には、翌課税期間(個人事業主であれば翌年、法人であれば翌事業年度)の初日から起算して「15日前の日」までに、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める届出書」を税務署に提出します。要件さえクリアしていれば、これで翌期からインボイス登録を取り消すことが可能です。

具体的な取消しのスケジュール

インボイス登録の具体的な取消しスケジュールは下記の通りです。

横にスクロールできます
個人事業主の場合12月17日
法人の場合(決算月によって異なる)3月17日(※3月決算の場合)

少しややこしいので、個人事業主と法人、それぞれのケースで具体的に見てみましょう。

個人事業主の場合(1月1日〜12月31日が課税期間)

例えば、「来年の1月1日」からインボイスをやめたい場合、その期の初日(1月1日)から逆算して15日前である「今年の12月17日」が提出期限となります。

法人の場合(決算月によって異なる)

法人の場合は、自社の事業年度に合わせて計算します。 例えば、「3月決算(4月1日から新年度)」の法人が、新年度の4月1日からインボイスをやめたい場合、初日(4月1日)から15日さかのぼった「3月17日」が提出期限となります。

Information

提出期限:翌課税期間の初日から起算して15日前の日まで

最も注意していただきたいのが、この起算日を1日でも過ぎてしまうと、次の1年間はインボイス登録が強制的に継続されてしまうという点です。 「うっかり提出を忘れていて12月18日になってしまった」という場合、来年は課税事業者のままとなり、やめられるのはさらにその次の年からになってしまいます。やめると決めたら、スケジュールに余裕を持って早めに提出することをおすすめします。

Warning

取り消す場合は期日にご注意を。

取消しの届出の出し方

では、具体的にインボイスの登録を取り消すための手続きについて見ていきましょう。 「難しそうな書類をたくさん書かないといけないのでは?」と身構える必要はありません。手続き自体は非常にシンプルです。

提出する届出の名前と提出先

インボイスの登録を取り消すために使用する書類は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める届出書」というものです。

参照:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/invoice_07.htm

提出先は、ご自身の事業所や自宅を管轄する「所轄の税務署」になります。紙の書類を郵送または持参して提出するほか、インターネット(e-Tax)から電子申請することも可能です。当事務所では、ペーパーレスで手軽に完結し、控えもデータで残るe-Taxでの提出を圧倒的におすすめしています。

届出書の作成方法

届出書の作成には、主に以下の2つの方法があります。

  • e-Tax(電子申請)で作成・提出する

e-Taxのマイページや「確定申告書等作成コーナー」にログインし、画面の指示に従って必要事項(登録番号や氏名など)を入力するだけで簡単に作成・提出が完了します。画面の案内に沿って進められるため、入力ミスも防げます。

  • 紙の様式をダウンロードして記入する

国税庁のウェブサイトから「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める届出書」のPDF様式をダウンロードし、印刷して記入します。記入項目はそれほど多くないため、手書きでも比較的スムーズに作成できます。

実際の届け出の書式例

では実際の「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める届出書」を実際の記載例とともに確認していきましょう。

記載例

①基本情報

法人名や代表者名、納税地など。

②登録の効力を失う日

インボイス登録の取り消し日になります。

福岡商事は決算日が7/30なので取り消し日は8/1となります。

③適格請求書発行事業者の登録を受けた日

インボイスの登録を行った日になります。

Warning

②登録の効力を失う日はインボイスの登録取り消しを希望する日ではなく、取り消しの届を提出した「翌」課税期間の初日になります。

インボイス取消し後の注意点

無事に届出を提出し、免税事業者に戻れたとしても、安心してはいけません。インボイスの登録を取り消すということは、自社だけでなく「取引先」にも影響を与えることになります。 後々トラブルにならないよう、以下の2つの点には十分に注意してください。 

  • 取引先に通知をする
  • 後で再登録することになったら制限がある

それでは詳しく見ていきましょう。

取引先に通知をする(できれば取り消す前に!)

インボイスの登録を取り消すと、自社が発行する請求書から「登録番号(Tから始まる番号)」が消えることになります。これは、取引先から見れば「御社に支払った代金について、消費税の仕入税額控除(消費税の差し引き計算)が満額できなくなる」ということを意味します。

もし、何も言わずに突然インボイス番号のない請求書を送ってしまうと、取引先の経理担当者を混乱させるだけでなく、「契約時の条件と違う」「インボイスを取り消す前になぜ教えてくれないのか」と不信感を与えてしまうリスクがあります。

インボイスを取り消すと決めたら、必ず事前に取引先へ通知し、理解を得るようにしましょう。 具体的には、「来年の〇月〇日より免税事業者に戻る予定であること」を伝え、今後の請求金額(消費税分をどうするか)について話し合いの場を持つことが大切です。できれば、税務署へ取消しの届出を出す前に、主要な取引先に相談しておくのが最も安全な進め方です

後で再登録することになったら制限がある

「とりあえず一度取り消してみて、取引先から言われたらまた再登録すればいいや」 …実は、このように安易に考えるのは少し危険です。

一度インボイスを取り消した後に、事業の状況が変わって「やっぱりもう一度インボイスが必要になった!」という場合、再登録をすること自体は可能です。しかし、以下のような制限や注意点があります。

  • 番号の発行に時間がかかる

改めて「登録申請書」を提出し直すことになるため、再び登録番号が発行されてインボイスを出せるようになるまでには、一定の審査期間(数週間〜1ヶ月程度)がかかってしまいます。提出してすぐに出せるわけではありません。

  • 再登録による「2年縛り」が発生するケースがある

免税事業者がインボイスに再登録して課税事業者になった場合、税法のルールによって「再登録を受けた日から原則2年間は、免税事業者に戻ることができない(いわゆる2年縛り)」という制限がかかることがあります。

「やめたり、また登録したり」を繰り返すのは、自社の経理処理が煩雑になるだけでなく、取引先からの信頼を損なう原因にもなります。今後の事業展開や主要な顧客層の見通しをしっかり立てた上で本当に取り消すべきかどうかを慎重に判断しましょう。

まとめ

今回はインボイスをやめる際の届け出やその手続きについて見てきました。

まとめると、取り消すことが有効なケースと、そうではないケースなど、事業規模や主な取引先などいろいろな要素が複雑に絡み合っていることがわかるかと思います。

また、登録後に2年は取り消せないなどの法的な制約や取引先との関係性がある一方で、迷っていたら取り消しが1年遅れてしまうような可能性もあるかと思います。

当社では経理処理や税務のみならずキャッシュフローに基づいた経営支援も行っております。

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佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。