【2026年7月10日版】全東信の破産で売上が未入金の飲食店向けの融資制度|日本政策金融公庫・商工中金・銀行・セーフティーネット1号

佐藤修一

こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

全東信からカード売上が入金されず、運転資金に困っている方へ

株式会社全東信の破産手続開始により、飲食店を中心に、本来入金される予定だったカード売上を受け取れず、給与、家賃、仕入代金などの支払いに影響が出ることが懸念されています。

経済産業省は2026年7月10日、影響を受ける中小企業・小規模事業者に対し、全国への特別相談窓口の設置、セーフティネット貸付の要件緩和、セーフティネット保証1号の適用手続開始などを公表しました。

融資を探している飲食店が、まず検討したいのは次の3つです。

相談先主な制度・対応現在の状況
日本政策金融公庫経営環境変化対応資金相談受付中
商工中金独自のセーフティネット関連資金相談受付中
銀行・信用金庫、信用保証協会セーフティネット保証1号付き融資事前相談受付中・正式指定に向けた手続中

新規融資だけでなく、すでに借りている融資の返済猶予や返済条件の変更についても相談できます。

資金がなくなってからではなく、数週間後や数か月後に不足する見込みが分かった段階で相談することが重要です。


1.日本政策金融公庫の「経営環境変化対応資金」

日本政策金融公庫は、全東信の破産手続開始によって影響を受ける中小企業・小規模事業者を対象に、融資と返済に関する特別相談窓口を全国の支店に設置しています。

主な融資制度として案内されているのが、セーフティネット貸付の一つである「経営環境変化対応資金」です。

主な融資条件

項目国民生活事業中小企業事業
融資限度額7,200万円7億2,000万円
運転資金の返済期間10年以内10年以内
運転資金の据置期間3年以内3年以内
設備資金の返済期間20年以内20年以内
設備資金の据置期間3年以内3年以内

個人事業主や小規模法人の飲食店は、まず国民生活事業へ相談するのが一般的です。日本政策金融公庫の事業資金相談ダイヤルでは、音声案内の「1」が個人企業・小規模企業向け、「2」が中小企業向けです。

売上が5%減少していなくても相談できる可能性がある

通常の経営環境変化対応資金では、最近3か月の売上高が前年同期などと比べて5%以上減少していることなどが要件として示されています。

ただし、今回のように特別相談窓口が設置された事象の影響を受け、資金繰りに著しい支障が生じている、または今後生じるおそれがある場合は、数値要件を満たしていなくても対象となる可能性があります。

したがって、

  • 売上高そのものは前年より減っていない
  • 現時点では給与や家賃を支払える
  • まだ預金残高は残っている

という場合でも、全東信からの未入金により今後資金が不足する可能性があれば、早めに相談してください。

無利子融資ではない

経済産業省の資料では、2026年7月時点における貸付期間5年以内の標準的な基準利率として、国民生活事業は年3.35%、中小企業事業は年2.65%とされています。

実際の適用利率は、貸付期間、担保の有無、信用リスクなどによって異なります。申込時点の利率を必ず確認してください。

また、融資限度額まで必ず借りられるわけではありません。未入金額、既存借入、今後の収益、返済能力などを踏まえて審査されます。


2.商工中金の独自セーフティネット関連資金

商工中金も、2026年7月10日付で全営業店に特別相談窓口を設置しました。

全東信の破産により必要となる運転資金・設備資金について、商工中金独自のセーフティネット関連資金を取り扱います。

主な融資条件

項目内容
資金使途全東信の破産により必要となる運転資金・設備資金
貸出金額制度上、限度の定めなし
運転資金の返済期間10年以内
運転資金の据置期間3年以内
設備資金の返済期間20年以内
設備資金の据置期間3年以内
金利商工中金所定の利率

「限度の定めなし」とは、希望額を無制限に借りられるという意味ではありません。実際の融資額は、必要資金、財務内容、未入金額、返済可能性などを踏まえて個別に審査されます。

商工中金では、新規融資だけでなく、既存借入金の返済猶予についても、事業者ごとの実情に応じて弾力的に対応するとしています。

すでに商工中金と取引がある場合は、まず担当営業店に相談してください。取引がない場合も、利用資格を含めて最寄りの営業店に確認できます。


3.セーフティネット保証1号を利用した銀行・信用金庫からの融資

セーフティネット保証1号は、大型倒産事業者に対して売掛金債権等を有し、資金繰りに支障が生じている中小企業者を支援する信用保証制度です。

信用保証協会が通常の保証枠とは別枠で、金融機関からの融資額の100%を保証します。これは信用保証協会が金融機関に対して行う保証であり、借入れをした飲食店の返済が免除される制度ではありません。

対象となる可能性がある事業者

一般的な認定要件は、次のいずれかです。

要件内容
債権額による要件指定事業者に対して50万円以上の売掛金債権等を有している
取引依存度による要件債権額は50万円未満だが、指定事業者との取引規模が全体の20%以上ある

ここでいう50万円は、最低借入額ではなく、セーフティネット保証1号の認定要件となる債権額です。

全東信からの未入金額が認定上の「売掛金債権等」に該当するか、どの資料で証明するかについては、所在地の市区町村、信用保証協会、取引金融機関へ確認してください。

保証限度額

一般保証とは別枠で、主に次の保証枠が設けられます。

保証区分別枠の限度額
普通保証2億円
無担保保証8,000万円
保証割合100%

ただし、100%保証であっても、次の点は変わりません。

  • 市区町村による認定が必要
  • 信用保証協会の保証審査がある
  • 金融機関の融資審査がある
  • 元金、利息、信用保証料等の負担がある
  • 希望額どおりの融資が決まるとは限らない

2026年7月10日時点では正式指定前

経済産業省は、全東信へのセーフティネット保証1号の適用に向けた手続きを開始し、今後官報で告示する予定としています。

2026年7月10日時点では正式指定前ですが、指定に先立って信用保証協会での事前相談が始まっています。

正式指定後の一般的な流れは次のとおりです。

  1. 取引金融機関または信用保証協会へ事前相談する
  2. 全東信からの未入金額を証明する資料を準備する
  3. 本店所在地の市区町村へ認定申請を行う
  4. 市区町村から認定書の交付を受ける
  5. 金融機関へ保証付き融資を申し込む
  6. 信用保証協会と金融機関の審査を受ける

正式指定を待ってから準備を始めるのではなく、未入金額の集計と事前相談を先に進めておきましょう。


全国の特別相談窓口一覧

経済産業省は、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工中金、全国の信用保証協会に特別相談窓口を設置しています。

日本政策金融公庫

事業資金相談ダイヤル:0120-154-505

受付時間は平日9時から17時です。
創業予定者、創業後間もない方、個人企業・小規模企業については、平日9時から19時まで相談を受け付けています。

音声案内は次のとおりです。

選択番号対象
1個人企業・小規模企業
2中小企業
3農林漁業者等

全国の日本政策金融公庫各支店でも、融資と返済に関する相談を受け付けています。

商工中金

商工中金は、全国の全営業店に特別相談窓口を設置しています。

専用の全国共通番号ではなく、最寄りの営業店の代表番号へ連絡し、全東信の破産手続開始に伴う特別相談窓口へ、融資の相談をしたい

と伝えてください。

新規融資の相談受付時間は、原則として平日9時から17時です。

沖縄振興開発金融公庫

沖縄県内の事業者は、日本政策金融公庫ではなく、沖縄振興開発金融公庫が主な政策金融機関の相談先です。

窓口電話番号
中小・小規模事業者向け共通窓口0120-981-827
本店・中小企業融資第一班098-941-1785
本店・生活衛生関係営業098-941-1830
既存融資の返済相談098-941-1815

本店、中部支店、北部支店、宮古支店、八重山支店に相談窓口があります。


全国51の信用保証協会

セーフティネット保証1号については、事業所所在地を担当する信用保証協会へ事前相談できます。

北海道・東北

北海道信用保証協会、青森県信用保証協会、岩手県信用保証協会、宮城県信用保証協会、秋田県信用保証協会、山形県信用保証協会、福島県信用保証協会

関東・甲信越

茨城県信用保証協会、栃木県信用保証協会、群馬県信用保証協会、埼玉県信用保証協会、千葉県信用保証協会、東京信用保証協会、神奈川県信用保証協会、横浜市信用保証協会、川崎市信用保証協会、新潟県信用保証協会、山梨県信用保証協会、長野県信用保証協会

東海・北陸

静岡県信用保証協会、愛知県信用保証協会、名古屋市信用保証協会、岐阜県信用保証協会、岐阜市信用保証協会、三重県信用保証協会、富山県信用保証協会、石川県信用保証協会、福井県信用保証協会

近畿

滋賀県信用保証協会、京都信用保証協会、大阪信用保証協会、兵庫県信用保証協会、奈良県信用保証協会、和歌山県信用保証協会

中国

鳥取県信用保証協会、島根県信用保証協会、岡山県信用保証協会、広島県信用保証協会、山口県信用保証協会

四国

徳島県信用保証協会、香川県信用保証協会、愛媛県信用保証協会、高知県信用保証協会

九州・沖縄

福岡県信用保証協会、佐賀県信用保証協会、長崎県信用保証協会、熊本県信用保証協会、大分県信用保証協会、宮崎県信用保証協会、鹿児島県信用保証協会、沖縄県信用保証協会

全国には、都道府県単位の協会に加えて、横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市を担当する市の信用保証協会があり、合計51協会です。所在地を担当する協会は、全国信用保証協会連合会の公式一覧で確認できます。

なお、セーフティネット保証1号の認定申請先は、原則として信用保証協会ではなく、法人の本店または個人事業主の主たる事業所が所在する市区町村です。


融資相談前に準備したい資料

金融機関が確認したいのは、単に「全東信が破産した」という事実だけではありません。

確認される主な内容は、次の3点です。

  1. 全東信からいくら入金されていないのか
  2. いつ、いくら資金が不足するのか
  3. 今回の資金不足を乗り越えた後、借入金を返済できるのか

未入金額を証明する資料

  • カード決済端末の売上明細
  • 全東信からの精算明細
  • 預金通帳の入金履歴
  • 最後に入金された日が分かる資料
  • 日付別・店舗別の未入金額一覧
  • 全東信との契約書
  • 会計ソフトの売掛金・未収入金明細

財務・資金繰りに関する資料

  • 直近2期分の確定申告書または決算書
  • 直近の試算表
  • 預金通帳
  • 借入金返済予定表
  • 今後2~3か月の資金繰り表
  • 給与、家賃、仕入代金、税金等の支払予定一覧
  • 希望借入額と資金使途の内訳

今後の営業継続を説明する資料

  • 新しい決済会社への申込状況
  • 現在利用できる決済手段
  • 新しい決済会社の入金サイクル
  • 今後の売上見込み
  • 経費削減などの対応策

正式な必要書類は制度や金融機関によって異なりますが、これらを先に整理しておくことで、融資相談を進めやすくなります。


いくら借りればよいのか

借入希望額を、全東信からの未入金額と同額にするだけでは足りない可能性があります。

決済会社の切替えまでカード売上が減少したり、新しい決済会社から最初に入金されるまで時間がかかったりするためです。

必要借入額は、おおむね次のように計算します。

必要借入額
=全東信からの未入金額
+今後2~3か月の資金不足額
+決済会社切替えに伴う費用
-使用可能な預金
-確実に入金される金額

例えば、次のケースを考えます。

内容金額
全東信からの未入金額300万円
今後2か月の資金不足額200万円
使用できる余裕資金△100万円
必要借入額の概算400万円

未入金額が300万円だからといって、借入額も300万円でよいとは限りません。

最低でも今後2~3か月の資金繰り表を作り、給与、家賃、仕入代金、税金、借入返済を含めて必要額を計算してください。


どこに最初に相談すればよいか

個人事業主・小規模法人の飲食店

日本政策金融公庫の国民生活事業と、現在取引している銀行・信用金庫へ並行して相談します。

商工中金との取引がある飲食店

商工中金の担当営業店に相談し、日本政策金融公庫や取引金融機関にも状況を共有します。

セーフティネット保証1号を利用したい飲食店

取引金融機関と所在地を担当する信用保証協会へ事前相談し、正式指定後に市区町村の認定手続きを進めます。

沖縄県内の飲食店

沖縄振興開発金融公庫、取引金融機関、沖縄県信用保証協会へ相談します。

どれか一つの審査結果を待ってから次へ進むのではなく、複数の窓口へ同時に相談することが重要です。

ただし、正式な融資申込みを複数の金融機関へ行う場合は、ほかの申込先、希望額、借入予定額を正確に伝えてください。


融資を申し込む際の注意点

補助金や給付金ではない

今回公表された支援の中心は、返済が必要な融資と信用保証制度です。

日本政策金融公庫、商工中金、信用保証協会付き融資のいずれにも審査があります。

据置期間中も通常は利息が発生する

元金返済の据置期間を設けても、一般的には利息の支払いが必要です。

据置期間を長くすると当面の資金繰りは楽になりますが、据置終了後の元金返済額が大きくなることがあります。

セーフティネット保証1号の正式指定を待ちすぎない

保証1号が正式指定されるまでにも、給与や家賃、仕入代金の支払日は到来します。

日本政策金融公庫と商工中金ではすでに相談を受け付けています。信用保証協会と取引金融機関への事前相談も始めておきましょう。

既存借入れの返済相談も行う

新たな借入れだけでなく、既存借入金の元金返済を一時的に減らすことで、必要な新規借入額を抑えられる可能性があります。

新規融資と既存借入れの返済条件変更をセットで相談することも検討してください。


まとめ|預金が不足する前に、公庫・商工中金・取引金融機関へ相談を

全東信からカード売上が入金されず、資金不足が見込まれる飲食店は、次の順番で対応してください。

  1. 全東信からの未入金額を確定する
  2. 今後2~3か月の資金繰り表を作成する
  3. 日本政策金融公庫へ経営環境変化対応資金を相談する
  4. 商工中金へ独自のセーフティネット関連資金を相談する
  5. 取引金融機関と信用保証協会へ保証1号の事前相談をする
  6. 既存借入金の返済条件変更も相談する

融資は、相談した当日に入金されるものではありません。

「今月は支払えるから大丈夫」ではなく、1~2か月後に預金が不足する可能性がある場合は、すぐに相談を始める必要があります。

税理士法人Accompanyでは、全東信からの未入金額の整理、今後の資金繰り表の作成、必要借入額の計算、金融機関への説明資料の作成を支援しています。

「どの融資制度を利用すればよいか分からない」

「いくら借りれば資金が足りるのか分からない」

「公庫や銀行に提出する資金繰り表を作りたい」

という飲食店経営者の方は、支払いが難しくなる前にご相談ください。

佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。