目次
はじめに
3月決算の会社にとって、11月は中間納税の月です。
税務署から知らされた金額を、そのまま払っている会社も多いのではないでしょうか。
中間納税の払い方は2つあります。
前年の税額のおよそ半分を納める「前年実績」と、期首から半年分の実際の利益で税額を計算する「仮決算」です。
税務署から知らされる金額は、前年実績のほうです。
結論から言うと、利益が前年並みなら前年実績で十分です。
上半期の利益が前年より大きく落ち、資金繰りも厳しい会社は、仮決算を検討しましょう。
ただし、仮決算は税理士の決算料がかかることがあるため、減らせる税金と比べて判断することが大切です。
どちらを選んでも1年分の税金は同じで、変わるのは払うタイミングだけです。
この記事では、中間納税の2つの払い方のちがいと、利益が落ちた年にどちらを選ぶと手元のお金がどう変わるかを、国税庁の資料をもとに数字で解説します。
中間納税はいつ払う?期限と対象になる会社
中間納税は、その事業年度の税金の一部を、期の途中で前払いする仕組みです。
事業年度が6か月を超える会社は、原則として期首から6か月を経過した日から2か月以内に、中間申告と納税をします(国税庁「法人税のあらましと申告の手引」)。
この20万円は、税務署に支払う国税の法人税だけの金額です。
住民税や事業税などの地方税は含めずに判断します。
住民税・事業税の中間申告が必要かどうかも、原則としてこの法人税の額で決まります(外形標準課税の対象法人を除く。
沖縄県「中間申告をしなければならない法人とは」)。
期限は「決算月の8か月後の月末」と覚えておくと便利です。
| 決算月 | 中間申告・納税の期限 |
|---|---|
| 3月 | 11月末 |
| 6月 | 2月末 |
| 9月 | 5月末 |
| 12月 | 8月末 |
中間納税で払った税金は、確定申告で1年分の税額から差し引かれます。
払いすぎていれば、確定申告のあとに還付されます。
法人税の予定納税(中間納税)の計算方法などの基本は、法人税の予定納税の解説記事でも紹介しています。
予定納税と中間納税のちがい
法人の中間納税のうち、前年実績で納める方法は「予定申告」と呼ばれ、その納付を「予定納税」と言うこともあります。
一方、個人の所得税にも「予定納税」という仕組みがあります。
前年の所得税をもとに計算した予定納税基準額が15万円以上の人が、その3分の1ずつを7月と11月に納めるものです(国税庁 No.2040「予定納税」)。名前は似ていますが、法人の中間納税とは別の制度です。
中間納税の計算方法
前年実績で納める場合、中間納税の額は次の式で計算します。
前年が12か月なら、前年の税額のおよそ半分です。
計算式:前年の税額 ÷ 前年の月数 × 6
たとえば前年の法人税が200万円なら、中間納税の法人税はおよそ100万円です。
国税の地方法人税、地方税の住民税(法人税割)と事業税も、それぞれ前年の税額をもとに同じように計算します。
住民税の均等割は、年額の半分が目安です(国税庁「法人税のあらましと申告の手引」、沖縄県「中間申告をしなければならない法人とは」)。
仮決算で納める場合は、期首から6か月を1つの事業年度とみなし、その期間の利益をもとに税額を計算します。
前年実績(予定申告)と仮決算のちがい
中間納税の払い方は2つあり、会社が選べます。
| 項目 | 前年実績(予定申告) | 仮決算 |
|---|---|---|
| 金額の決め方 | 前年の税額 ÷ 前年の月数 × 6(前年のおよそ半分) | 期首から6か月を1事業年度とみなし、その実績で計算 |
| 手間 | 少ない(税務署から金額が知らされる) | 多い(半年分の決算が必要) |
| 費用 | ほとんどかからない | 税理士に頼むと、半年分の決算料がかかることがある |
| 払いすぎた場合 | 確定申告のあとに還付(還付加算金が付く) | 実績で計算するため、払いすぎは起きにくい |
| 向いている会社 | 利益が前年並みか増えている会社、手元資金に余裕がある会社 | 上半期の利益が前年より大きく落ち、資金繰りが厳しい会社 |
| 使えない場合 | — | 仮決算の税額が前年実績の金額を超えるとき、中間申告そのものが不要なとき |
期限までに中間申告書を出さなかった場合は、前年実績で申告したものとみなされます。つまり何もしなければ、前年実績の金額を納めることになり、期限までに納めないと延滞税がかかります。
数字で比べる:上半期の利益が落ちた年
上半期の利益が前年より大きく落ちた年は、仮決算にすると11月に払う税金を大きく減らせます。
次の条件で比べてみます。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 決算月 | 3月(中間納税は11月末まで) |
| 前年の税額 | 300万円(法人税・住民税・事業税の合計) |
| 今期の利益 | 上半期200万円、下半期200万円(年間400万円) |
| 支払い税率 | 約22%(所得400万円以下の部分。法人税15%に、地方法人税・住民税・事業税・特別法人事業税を加えた合計。標準税率の場合) |
中間納税や確定申告で実際に払う金額を見るため、ここでは実効税率ではなく、各税金の税率を足し合わせた「支払い税率」で計算します。
実効税率は、事業税が翌年の経費になる効果を差し引いた税率で、支払い税率より少し低くなります。
前年実績なら、11月に払うのは前年の半分の150万円です。
仮決算なら、上半期の利益200万円 × 22% = 44万円で済みます。
今期1年分の税金は400万円 × 22% = 88万円なので、どちらを選んでも最終的な負担は同じです。
下の表の各マスは、上段がその時点の支払い・還付、下段の( )内が累計です。
| 時点 | 前年実績で払う | 仮決算で払う |
|---|---|---|
| 11月(中間納税) | −150万円(累計 −150万円) | −44万円(累計 −44万円) |
| 翌年5月(確定申告) | +62万円(還付)(累計 −88万円) | −44万円(累計 −88万円) |
前年実績を選ぶと、11月から還付を受けるまでの間、仮決算より106万円多くお金が出ていることになります。利益が落ちて資金繰りが苦しい年ほど、この差は大きく響きます。
※住民税の均等割は、計算を簡単にするため除いています。
還付は確定申告のあとに受け取ります。
払いすぎた分には還付加算金が付く
前年実績で払いすぎた中間納税は、確定申告のあとに還付されます。
このとき、中間納税を納めた日の翌日から還付が決まる日までの期間に応じて、利息にあたる「還付加算金」が付きます(法人税法第79条)。
還付加算金の割合は毎年変わり、2026年は年1.3%です(総務省資料)。
上の例で62万円が還付される場合、12月1日から翌年6月末までを年1.3%で計算すると、およそ4,600円です(翌年の割合も同じと仮定した概算)。
払いすぎが丸損になるわけではありませんが、金額は大きくなく、還付加算金は会社の収入として法人税の対象にもなります。
手元資金に余裕がある会社なら、仮決算の手間や決算料をかけずに前年実績で払うのも一つの考え方です。利益が大きく落ちて資金繰りが厳しい年は、決算料を払ってでも11月の支払いを減らせる仮決算が向いています。
仮決算を選ぶときの注意点
仮決算は便利ですが、選ぶ前に次の3点を確認しましょう。
- 仮決算は、税理士に頼むと決算料がかかることがあります。 減らせる中間納税の額と決算料を比べて、決算料のほうが高くつくなら前年実績で十分です。
- 仮決算の税額が前年実績の金額を超える場合は、仮決算を選べません。利益が増えている年は、前年実績で払うことになります。
- 期限は前年実績と同じです。3月決算なら9月末で締めて、11月末までに申告と納税を終える必要があります。
なお、消費税の中間申告は法人税とは別の制度で、回数や計算方法が異なります。くわしくは消費税の中間納税の解説記事をご覧ください。
11月の中間納税に備える
中間納税では、前年の税額のおよそ半分がまとまって出ていきます。
3月決算なら、5月に前年の確定申告が終わった時点で11月に払う金額の目安がわかるので、早めに資金を確保しておきましょう。
決算前に節税で経費を使うと、翌期の中間納税が減り、11月に手元のお金に余裕が出ます。
ただし、その分は翌年5月の確定納税で払うことになるため、使わずに残しておくのが安心です。
月ごとのお金の動きは、前回の記事でくわしく解説しています。
前回の記事:節税で100万円使うと、手元のお金はいくら減る?中間納税まで追ってみた
よくある質問
中間納税はいつ払いますか?
期首から6か月を経過した日から2か月以内です。3月決算なら11月末、12月決算なら8月末が期限です。
中間納税を払いすぎたらどうなりますか?
確定申告で1年分の税額から中間納付額を差し引き、払いすぎた分は還付されます。還付のときには、利息にあたる還付加算金も付きます。
仮決算にするには、事前の届け出が必要ですか?
事前の届け出はいりません。期限までに、仮決算にもとづく中間申告書を出せば選べます。
中間納税の勘定科目と仕訳は?
法人税・住民税・事業税の中間納付額は「仮払法人税等」で処理し、決算で1年分の「法人税、住民税及び事業税」に振り替えるのが一般的です。
たとえば150万円を納めたときは、借方に仮払法人税等150万円、貸方に普通預金150万円と記帳します。
中間納税が払えないときは?
上半期の利益が落ちているなら、まず仮決算で中間納税を減らせないか検討しましょう。それでも期限までに納めるのが難しいときは、早めに税務署へ相談してください。
法人税などの国税を一度に納めると事業の継続が難しくなるおそれがある場合は、納期限から6か月以内に申請すれば「換価の猶予」を受けられることがあります(国税庁「換価の猶予の申請手続」)。
申告書や納付書が届きません
前年の確定申告をe-Taxで出した会社には、紙の予定申告書は送られません。
代わりに、申告期限の月の上旬(3月決算なら11月上旬)に、e-Taxのメッセージボックスへお知らせが届きます(国税庁「法人税及び地方法人税予定申告書の送付等に関するお知らせ」)。
お知らせや書類が届いていなくても、申告と納税の義務は変わりません。
今期が赤字の見込みでも、中間納税は必要ですか?
前年実績の金額は前年の税額で決まるため、今期が赤字の見込みでも中間納税の対象になります。
上半期が赤字なら、仮決算にすることで中間納税を抑えられる場合があります。
まとめ:利益が落ちて資金繰りが厳しい年は仮決算を検討する
中間納税は、1年分の税金の前払いです。前年実績でも仮決算でも、1年分の負担は変わりません。
利益が前年並みなら、手間の少ない前年実績で十分です。前年実績で払いすぎても、還付加算金が付いて戻ってきます。
上半期の利益が大きく落ちて資金繰りが厳しい年は、仮決算で11月の支払いを減らし、手元のお金を守ることを検討しましょう。
ただし、仮決算は決算料がかかることがあるので、減らせる中間納税の額と比べて判断してください。
※この記事は、2026年11月時点の制度をもとに、考え方をわかりやすくするため条件を単純にした例です。
実際の税額は、会社の所得や所在地などによって変わります。具体的な判断は、税理士などの専門家にご確認ください。
参考資料
この記事は、次の公的資料をもとに書いています。
- 国税庁「法人税のあらましと申告の手引」(申告の種類と内容)
- 国税庁「法人税及び地方法人税予定申告書の送付等に関するお知らせ」
- 国税庁 No.2040「予定納税」
- 国税庁「換価の猶予の申請手続」
- 沖縄県「中間申告をしなければならない法人とは」(法人県民税・法人事業税)
- 総務省資料(延滞金・還付加算金の割合)
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佐藤 修一
税理士法人Accompany 代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。







