敷金と礼金は経費になる?勘定科目や仕訳方法と個人事業主の場合の注意点を税理士が解説

佐藤修一

こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

オフィスや店舗、あるいはご自宅を事務所として新たに借りた際に、「初期費用として支払った敷金や礼金は経費になるの?」「どうやって仕訳すればいいの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。

金額が大きいから間違えたらどうしよう…」と不安になる必要はありません。

敷金と礼金はどちらもまとまった金額になりますが、実は税務上の取り扱い(経費になるかどうか)や仕訳のタイミングが明確に異なります。

ここを正しく処理さえすれば、決算や税務調査での説明も全く問題ありません。

この記事では、敷金・礼金の処理について悩まれている方に向けて、以下の内容について分かりやすく解説します。

  • 敷金と礼金の違いと、それぞれの勘定科目
  • 具体的な仕訳例
  • 個人事業主特有の「家事按分」に関する注意点

これを読めば、もう敷金と礼金の経理処理で悩むことはなくなります!

敷金と礼金とは?違いはなに?

物件を契約する際、初期費用としてセットで支払うことが多い「敷金」と「礼金」ですが、会計や税務上の性質は全くの別物です。

結論から言うと、両者の最大の違いは「将来、自分に返ってくるお金かどうか」という点にあります。この違いが、そのまま経費にできるかどうかの分かれ道になります。

まずは、それぞれの特徴を分かりやすく表で比較してみましょう。

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項目敷金(保証金)礼金
意味合い大家さんに一時的に預けておく「担保」大家さんに対する「お礼」
退去時の返還原則として返還される返還されない
税務上の扱い原則として経費にならない(資産計上)経費になる
主な勘定科目敷金、差入保証金支払手数料、地代家賃、長期前払費用など

敷金(しききん)とは?

敷金は、家賃の未払いや退去時の原状回復費用(クリーニング代など)に備えて、大家さんに一時的に預けておく担保(保証金)のようなものです。

あくまで「預けているお金」であるため、退去時には未払い分などを差し引かれた残額が原則として手元に返ってきます。そのため、支払ったタイミングでは経費にはならず、「会社の資産」として帳簿に記録しておく必要があります。

Information

関西などの一部地域では「保証金」と呼ばれることもありますが、会計上の取り扱いは敷金と同じです。

礼金(れいきん)とは?

礼金は、文字通り物件を貸してくれた大家さんに対して支払うお礼のお金です。

敷金とは異なり、退去時に返還されることはありません。いわば「物件を借りるためのコスト」として支払うお金であるため、原則として経費として計上することができます。

このように、「返ってくる敷金=資産」「返ってこない礼金=経費」という大前提を押さえておきましょう。これを理解しておくと、この後の仕訳処理がグッと分かりやすくなります。

敷金の勘定科目は?

敷金は先ほどお伝えした通り「退去時に原則として返ってくるお金」です。

口座から何十万円もお金がごっそり減ったのだから、当然今年の経費になるよね?」と思われがちですが、実は支払ったタイミングでは経費にすることができません。

なぜなら、敷金は大家さんに「一時的に預けているだけのお金」だからです。 パソコンや文房具などを買って消費したわけではなく、「会社の口座」から「大家さんの預り口」へ、お金の保管場所が一時的に移動しただけだと考えてみてください。

そのため、帳簿上は経費(費用)ではなく、将来会社に戻ってくるお金=「会社の資産」として扱います。

使用する勘定科目は、敷金または差入保証金(さしいれほしょうきん)」を使うのが一般的です。

どちらの勘定科目を使っても税務上は全く問題ありません。お使いの会計ソフト(freeeやマネーフォワードなど)に最初から登録されている方を選んでいただいて大丈夫です。 ただし、一度「敷金」と決めたら、翌年以降もコロコロ変えずに同じ勘定科目を継続して使うようにしましょう。

佐藤修一

敷金の勘定科目は「敷金」または「差入保証金」などが一般的です。

敷金の仕訳方法は

それでは、実際に敷金を支払ったときと、退去して返還されたときの具体的な仕訳例を見ていきましょう。

ケース1:契約時に敷金を支払ったとき

【例】店舗の賃貸契約を結び、敷金30万円を普通預金から支払った。

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借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
敷金(または差入保証金)300,000円普通預金300,000円

このように、支払時は全額を資産(敷金)として計上します。この時点では経費になりません。

ケース2:退去時に敷金が返還されたとき(一部差し引かれた場合)

退去する際、預けていた敷金からハウスクリーニング代や修繕費などが差し引かれて戻ってくるケースがほとんどです。この差し引かれた原状回復費用は、退去したタイミングで初めて「経費」として計上することができます。

【例】店舗を退去し、預けていた敷金30万円のうち、クリーニング代として5万円が差し引かれ、残りの25万円が普通預金に振り込まれた。

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借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
普通預金250,000円敷金(または差入保証金)300,000円
修繕費(※)50,000円

(※差し引かれたクリーニング代などの原状回復費用は、「修繕費」や「支払手数料」などの勘定科目で処理するのが一般的です。)

ケース3:はじめから「返ってこない」と決まっている敷金がある場合

賃貸契約書の中には、「退去時に敷金のうち〇ヶ月分は返還しない」といった特約(いわゆる「敷引き」や「償却」)が定められていることがあります

この場合、最初から返ってこないと分かっている部分については、資産(敷金)として処理してはいけません。礼金と同じように経費、あるいは「繰延資産」として処理して償却(=費用化)する必要があります。

【例】店舗を契約し、敷金50万円を普通預金から支払った。ただし、契約書に「退去時に10万円を償却する(返還しない)」という特約がある場合。

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借方勘定科目金額貸方勘定科目金額摘要
敷金(または差入保証金)400,000円普通預金500,000円〇〇店舗 敷金(返還予定分)
地代家賃(または支払手数料)100,000円〇〇店舗 敷金償却分

このように、返ってくる部分(40万円)は「資産」、最初から返ってこない部分(10万円)は「経費」として分けて仕訳を行います。

返ってこない金額が「20万円以上」の場合は注意!

返還されない敷引き分が20万円以上になる場合は、後の「礼金」の項目で解説するルールと同じく、支払った年に一括で経費にすることができません。 一旦「長期前払費用」という資産として計上し、契約期間に応じて少しずつ経費にしていく必要があります。契約書の特約事項と金額は必ず確認するようにしましょう。

佐藤修一

敷金が返還されないことが分かっている場合は、通常の敷金と同じように計上しないことに注意しましょう。

礼金の勘定科目は

礼金は、大家さんに対して支払う「お礼のお金」であるため、敷金と違って将来返ってくることはありません。そのため、原則として経費(費用)で落とすことができます。

ただし、注意が必要なのが「金額が20万円以上かどうか」という点です。金額によって使用する勘定科目が変わってきます。

礼金が20万円未満の場合

  • 地代家賃(賃貸契約に付随する費用として処理する場合)
  • 支払手数料(契約時の各種手数料と一緒に処理する場合)

どちらを使っても問題ありませんので、自社のルールや過去の処理に合わせて選択してください。

礼金が20万円未満の場合、その全額が一括で支払った会計期間の費用になります。

礼金が20万円以上の場合

礼金が20万円以上になると、税法上「繰延資産(くりのべしさん)」という扱いになり、支払った年に全額を経費にすることができません。

えっ、返ってこないお金なのに経費にできないの?」と思われるかもしれません。

これは、「20万円以上の礼金は、その物件を借りて事業を行う期間(契約期間)にわたって、少しずつ効果が及ぶもの」と税法で決められているためです。

この場合、支払った時点では一旦「長期前払費用」という資産の科目で処理し、契約期間(原則5年、契約期間が2年などの場合はその期間)にわたって毎期少しずつ経費減価償却費など)へ振り替えていくことになります。

参照: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5460.htm

Warning

礼金が20万を超える場合は一括で費用計上できないことに注意しましょう。

礼金の仕訳方法は

それでは、金額ごとの具体的な仕訳例を見ていきましょう。

ケース1:礼金が20万円未満の場合(一括で経費にする)

【例】オフィスを契約し、礼金15万円を普通預金から支払った。

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借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
地代家賃(または支払手数料150,000円普通預金150,000円

20万円未満であれば、このように支払ったタイミングで全額を経費として計上できます。

ケース2:礼金が20万円以上の場合(数年間に分けて経費にする)

【例】店舗を契約(契約期間2年)し、礼金24万円を普通預金から支払った。

① 契約(支払)時の仕訳 まずは全額を「長期前払費用」として資産計上します。

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借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
長期前払費用240,000円普通預金240,000円

② 決算・確定申告時の仕訳(1年目) 契約期間である2年(24ヶ月)で均等に分割し、当期(12ヶ月分)の12万円だけを経費に振り替えます

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借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
減価償却費(※)120,000円長期前払費用120,000円

(※「繰延資産償却費」などの科目を使う場合もあります。)

Warning

礼金を支払った際は、ルールに則った計上をしましょう。

経費に全額落としてしまうと、税務調査で経費の過大計上(損金算入の誤り)として指摘されてしまうリスクがあります。

20万円を超える礼金を支払った際は、契約書の「契約期間」を必ず確認し、正しく数年に分けて経費化しましょう。

ただし、契約期間が5年を超える場合は5年で分割して費用にすることになりますので注意が必要です。

個人事業主の場合の注意点は?

フリーランスや個人事業主の方が、「自宅兼事務所」として物件を新たに借りる場合、特有のルールに注意しなければなりません。

それが「家事按分(かじあんぶん)」です。

プライベートな生活空間と、事業で使う仕事場が一緒になっている場合、支払った家賃や初期費用の全額を経費にすることはできません。事業で使っている割合(床面積や使用時間など)を算出し、その割合分だけを経費として計上する必要があります。

礼金の家事按分

礼金を経費(20万円以上の場合は毎年の減価償却費)として計上する際も、この家事按分を適用します。

【例】家事按分の割合(事業用)を「30%」と設定している自宅兼事務所で、礼金10万円を支払った場合

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借方勘定科目金額貸方勘定科目金額摘要
地代家賃(30%分)30,000円普通預金100,000円自宅兼事務所 礼金
事業主貸(70%分)70,000円プライベート分

このように、経費にならないプライベートな支出分は「事業主貸(じぎょうぬしかし)」という勘定科目を使って処理します。

敷金の家事按分

敷金はそもそも経費ではなく「資産」であるため、支払ったタイミングでは按分せず、全額を「敷金」として計上します。

ただし、退去時に原状回復費用(クリーニング代など)が差し引かれて戻ってきた場合、その差し引かれた経費(修繕費など)に対して家事按分を行う必要があるため忘れないようにしましょう。

【例】家事按分の割合(事業用)を「30%」と設定している自宅兼事務所を契約し、敷金30万円を支払った。その後退去し、クリーニング代として5万円が差し引かれ、残りの25万円が振り込まれた場合。

① 契約(支払)時の仕訳

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借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
敷金300,000円普通預金300,000円

② 退去(返還)時の仕訳 差し引かれたクリーニング代5万円のうち、事業用(30%)の15,000円が「修繕費」、プライベート用(70%)の35,000円が「事業主貸」となります。

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借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
普通預金250,000円敷金300,000円
修繕費(30%分)15,000円
事業主貸(70%分)35,000円
佐藤修一

契約時ではなく、退去した際に事業按分することに注意しましょう。

まとめ

今回は、敷金と礼金の経理処理について解説しました。
重要なポイントをまとめると以下の通りです。

  • 敷金: 原則返ってくるので「資産」として処理する(支払時は経費にならない)
  • 礼金: 返ってこないので「経費」として処理する
  • 20万円の壁: 20万円以上の礼金は「長期前払費用」として数年に分けて経費にする
  • 自宅兼事務所: 経費に落とすタイミングで「家事按分」が必要

初期費用は金額が大きく、経理処理を間違えると決算や納税額に大きな影響を与えてしまいます。それぞれの性質の違いをしっかり理解して、正しい仕訳を心がけましょう!

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佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。