団信で住宅ローンが完済された時、相続人は確定申告が必要なのか?必要有無やかかる税金の種類を税理士が解説

佐藤修一

こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

ご家族が亡くなられた直後は、役所や金融機関への届出、遺産分割の準備など、さまざまな相続手続に追われて本当に大変ですよね。

そうした慌ただしい日々の中で「団信のおかげで住宅ローンがゼロになって一安心した」と思っていたら、翌年に思いがけない税金の申告が必要になり困惑してしまうケースは少なくありません。

本記事では、団信による住宅ローン免除の基本的な税務上の扱いから、連帯債務一時所得が発生する具体的な仕組みや注意点まで、分かりやすく解説します。ご自身の契約内容と照らし合わせながら確認していきましょう。

団信(団体信用生命保険)で住宅ローンがゼロに。税金はかかるの?

結論からお伝えしますと、単独で住宅ローンを組んでいた方が亡くなり、団信(団体信用生命保険)によって住宅ローンが全額免除された場合、遺族に対して相続税や所得税は「原則としてかかりません」。

なぜ税金がかからないのか?

生命保険金を受け取ると通常は税金がかかりますが、団信の保険金の受取人は遺族ではなく「金融機関」です。 金融機関が直接保険金を受け取り、そのまま住宅ローンの返済に充てます。遺族が手元に直接お金を受け取るわけではないため、生命保険金(みなし相続財産)としての相続税はかからないのです。 また、「借金を肩代わりしてもらったことによる利益(債務免除益)」に対しても、亡くなったことによる免除の場合は、所得税がかからないルールになっています。

相続税計算時の注意点(借金の引き算はできない)

ここで一つ注意点があります。相続税の計算では、亡くなった方の借金(マイナスの財産)を遺産(プラスの財産)から差し引く「債務控除」という仕組みがあります。 しかし、団信によって住宅ローンは「亡くなったと同時にゼロになって消滅する」と考えるため、残された借金は無いものとして扱われます。つまり、亡くなった時点の住宅ローン残高を、相続財産から差し引くことはできません。

要注意!一時所得として所得税がかかる「連帯債務」のケース

単独の住宅ローンであれば税金はかからないとお伝えしましたが、例外があります。それが「夫婦(家族)の連帯債務」で住宅ローンを組んでいたケースです。
これが、思いがけない税金(一時所得)が発生しやすい最大の落とし穴となります。

具体例:夫が亡くなり、妻の借金までゼロになった場合

例えば、夫婦が連帯債務(ローンを2人で一緒に返す契約で、負担割合は50%ずつ)で4,000万円の住宅ローンを組み、夫だけが団信に加入していたとします。 夫が亡くなったとき、団信の保険金によって住宅ローンの4,000万円が全額完済されます。 このとき、夫の負担割合である2,000万円が免除された分については、先ほどお伝えした通り非課税です。しかし、妻の負担割合である残り2,000万円までもが、夫の団信によって完済されます。

妻の立場から見ると、「自分が返さなければならない2,000万円の借金を、夫が加入していた保険で肩代わりしてもらった」ことになります。この利益(経済的利益といいます)は、税務上「一時所得」として扱われ、妻の所得税や住民税の対象となってしまうのです。

親子で連帯債務で住宅ローンで組んでいる場合も対象になります。ご家族の逝去で自分が負担すべきものだったローン割合分まで完済された時にこの利益が生じることになります。

一時所得の計算方法

一時所得には年間最大50万円の「特別控除額」があり、概算の計算式は以下のようになります。 (受け取った利益 - 50万円) × 1/2 = 課税対象額

※実際には、ここから給与など他の所得と合算して税金が計算されます。免除された金額が大きい場合、翌年の税金負担が非常に重くなる可能性があるため注意が必要です。

高度障害によって免除された場合はどうなる?

団信は、死亡時だけでなく「高度障害状態」になった場合にも住宅ローンが免除されることがあります。 先ほどの連帯債務の例で、夫が高度障害状態になり、住宅ローンが全額免除された場合はどうなるでしょうか。 実は、身体の傷害に起因して受け取った利益については、税務上「非課税」とするルールがあります(所得税基本通達9-20)。そのため、この場合は連帯債務者である妻の免除分も含めて、一時所得にはならず非課税として扱われます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。 「団信で住宅ローンがゼロになった」という事実一つをとっても、単独債務であれば非課税ですが、連帯債務などのケースでは、残されたご家族に一時所得として税金がかかる可能性があります。

税務の判断は、住宅ローンの契約形態(連帯債務か、ペアローンかなど)や、団信の加入状況によって大きく変わります。自己判断で申告漏れとなってしまうと、後からペナルティ(加算税など)がかかる恐れもあります。 判断に迷ったときや、相続税の申告が必要かどうかの確認を含めて、最後は税理士に相談することも検討しましょう。

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佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。